外務省専門職員、在外研修中のフランスから:齋藤すみれさんインタビュー

外交官のなかでも、対象地域の言語・文化・経済等のスペシャリストである「外務省専門職員」。東京外国語大学は毎年多くの外務省専門職員を輩出しています。2020年度も51名の採用者のうち、本学出身者は12名。採用者数は全国一位です。

2018年3月に本学国際社会学部西南ヨーロッパ地域/フランス語 国際関係コースを卒業し、外務省専門職員となった齋藤すみれさんもそのお一人です。今回のTUFS Todayでは、本学の公務員プログラムの学生に向けたオンライン座談会の機会に、現在フランスにて在外研修を受けている齋藤さんにオンラインでインタビューをしました。

インタビュー・取材担当:言語文化学部フランス語1年・村上眞海さん(広報マネジメント・オフィス学生取材班)

——本日は、フランス現地からお時間をいただき、ありがとうございます。コロナ禍によりオンラインでつながることが容易になり、今回のインタビューを実現することができました。フランスに滞在されているとのことですが、現在はどのようなことをされているのですか。

在外研修地フランスにて

フランスのエクス・アン・プロヴァンスで在外研修を行っています。在外研修とは、2年から3年の間、自分の研修語を母国語とする国に留学する制度で、今は学生に戻ったかのような生活を送っています。今年の7月に研修を終えた後は、フランス語圏アフリカ所在の在外公館にて勤務を開始する予定です。

——7月からアフリカで勤務される予定なのですね。もともと外交官をめざしたきっかけはどのようなことからでしょうか。

山形県で生まれ育った私は、海外の方と関わる機会がほとんどない生活を送っていました。高校生の時に東京を訪れ、国籍や肌の色を問わず多くの人々が笑顔を浮かべている空間を見て感激しました。それと同時に、なぜ国際社会では対立が頻発するのかと疑問を抱きました。この経験から国際社会の平和に貢献したいと思うようになり東京外国語大学に入学しました。在学中には、2度、短期留学で海外を訪れ、周囲から”日本人”として見られ日本について説明や意見を求められたり、日本人であることを理由に良くしてもらったりした経験から日本人としての自覚が強くなりました。3年生からは、松隈潤教授のゼミに所属し国際法を学びました。国際法の知識を活かして日本の代表として国際社会で働きたいと思い、外務省専門職試験を受験することにしました。

——難関の外務省専門職試験に一発合格、民間企業への就職活動でも内定を得られたことは容易なことではなかったと思いますが、その秘訣を教えてください。

当初は外交官という選択肢を捨てたくないという気持ちで、2年生の10月から専門職試験対策のために予備校に入会しました。4年で卒業するため、短期留学(ショートビジット)には2回参加しましたが、長期留学はしませんでした。語学では劣っていたかもしれませんが、早く対策を始めたので他の科目で周囲と差をつけられたのかもしれません。また、民間企業のインターンシップに2度参加したことは就活の面でも、民間と公務員の違いを知るという面でも良い経験になりました。専門職試験と就活を両立するために、スケジュール管理は工夫しました。例えば、専門職一次試験の筆記試験の前は民間企業のエントリー数をかなり絞り、専門職の試験勉強に集中しました。専門職試験は、一次試験と二次試験の日程が離れていますので、その間に民間企業のエントリーを広げました。面接は専門職二次試験の面接の練習にもなるからです。結果として、民間企業から内定をいただきましたが、無事専門職試験にも合格できました。試験では失敗した科目があっても最後まで諦めないことが大切だと思いました。

——入省後のことを教えてください。

入省後は1か月ほどで語学の他に国際法やビジネスマナー、省内の各局・部署の仕事の大まかな内容など、業務に必要な基本知識を学びます。その後、語学研修を続けながら、霞が関の本省に配属され、約1年間、研修生として業務にあたります。私は経済局のサービス貿易室というところに配属されました。専門的な知識が求められ、弁護士や保険会社、他の省庁など外部からの出向者も多くいる部署です。専門用語や略称での会話が飛び交っていますので、最初の3か月くらいはついていけず苦しい思いもしました。しかし、外務省では2、3年で異動があり、新たな分野に飛び込む機会が多いので、どんどん知識を吸収していくことはこの先もずっと求められると思っています。

——研修は大変なことも多かったと思いますが、その中での思い出ややりがいなどはありますか

自由貿易協定(FTA)や経済パートナーシップ協定(EPA)関連の業務が特に面白かったです。日・ASEAN包括的経済連携 (AJCEP) 協定の議定書の和訳にも関わったのですが、「また」と「かつ」の使い分けや句読点の使い方まで細かく決まっていることを知りました。トルコとの交渉会合への参加も印象に残っています。どの課室にも言えることですが、研修生にも海外出張の機会があり、外交上の大きな舞台に立ち会うことで強くやりがいを感じられます。

——本省での研修後のことを教えてください。

通常約3か月間の語学研修を経てすぐに在外研修に出発しますが、私の場合は、在外研修前に、G20大阪サミットの業務に関わることができました。「配偶者班」という班に配属され、サミット中に安倍昭恵夫人が各国首脳の配偶者をもてなす「配偶者プログラム」の準備・運営のサポートを行いました。京都訪問や歌舞伎鑑賞などの企画が分単位、秒単位で計画されていたのですが、参加者の出欠情報やプロフィール、食べられないもの、ボディーガードの動き、お手洗いの数といった仔細にわたって事前にきっちり把握する必要があるんです。本省研修時とは異なり、政策の中身とはまた別のソフトな業務で新鮮でしたね。

G20大阪サミット(2019年)

——本学ではフランス語を専攻されていましたが、なぜフランス語を専攻しようと思われたのでしょうか。実際にフランスで生活して心境の変化等はありましたか。

実は入学当初は、国際機関で働く国際公務員にも関心がありました。そのため、英語以外で国際機関の公用語になっている言語、また、世界の広い地域で使用されている言語という基準で専攻語を考えました。アラビア語とも迷いましたが、最終的には高校の先生の勧めもあり、フランス語にしました。

フランスに留学し、特に大学での授業を通じてフランス語の勢力の強さを改めて感じています。大学の授業で日常的に国際法の判例や国際機関の文書を読むのですが、ほとんどの判例・文書がフランス語で利用可能です。また仕事面では、フランス語でも発言も可能な国際会議の場合には、英語ではなくあえてフランス語で発言をすることで、フランス語圏諸国の代表と交流を深めるきっかけとする日本の外交官もいます。英語の普及に圧されつつあるのは事実ですが、それでも国際社会におけるフランス語の地位は依然として高いと感じます。

——今年の7月にフランスでの研修を終え、その後アフリカのフランス語圏の在外公館で勤務を予定されているとのことですが、今のお気持ちは。

とても楽しみにしています。私が赴任する予定の国には、確かに気候や生活面では厳しい面も沢山あります。一方で、経済協力から安全保障まで幅広い分野を扱いながらも決して人数の多い公館ではないので、分野を跨いでさまざまな業務を経験できるのではないかと期待しています。これまで本省で関わってきた分野と全く異なる分野ですので多少の不安はありますが、新たな知見を得る良い機会でもありますので、しっかり勉強して知識を吸収し、いち早く赴任先公館の主要戦力となれるよう最大限努力する覚悟です。

——最後に、東京外大の後輩にメッセージをお願いします。

もし、外交官に興味はあるけれど自分には無理だと思っている方がいらっしゃれば、背中を押したいです。外務省専門職試験は、しっかり準備をすれば合格に手の届く試験だと思います。簡単に諦めてしまうのは勿体ないのではないでしょうか。外務省は皆さんのような言語習得へのモチベーションが高く、異文化や海外の環境への耐性があり、新しい知識を抵抗なく貪欲に吸収していく人材を求めていると思います。自分の可能性を自分で潰さないでください。受験を迷っている方はぜひ挑戦していただきたいです。

インタビュー後記
学生取材班としての初めての仕事で、フランス語専攻の先輩である齋藤さんにお話を伺うことができ大変嬉しく思います。画面越しでも謙虚で優しいお人柄が伝わってきましたが、夢に向かって努力し続ける姿勢はとてもかっこよく、刺激を受けました。改めて外務省専門職員やフランス語の魅力を知り言語学習への意欲が高まるとともに、「自分の可能性を自分で潰さないでほしい」という言葉に励まされました。私も自分の興味にとことん向き合い齋藤さんのように夢を実現したいと思います。また、この記事が多くの外大生の背中を押すものとなることを期待しています。最後に、齋藤さんの益々のご活躍をお祈り致します。
取材担当:村上眞海(言語文化学部フランス語1年)

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