ダイアローグのことばとモノローグのことば――ヤクビンスキー論から読み解くバフチンの対話理論

2019年4月
田島充士(編著)
福村出版

内容の紹介

本書は,心理学研究においても引用されることが多い,1920年代以降にロシア(旧ソ連)で活躍した文芸学者・バフチンのダイアローグ論を実践的に読み解くことを目的としている。
本書の目玉の一つは,バフチンのダイアローグ論にかなり影響を与えていたといわれる言語学者・ヤクビンスキーの論文『ダイアローグのことばについて』(1923年出版)の,日本初の完全訳を収録していることにある。ダイアローグを論じるバフチンの主要な著作には,ヤクビンスキーの論が引用されているとおぼしき痕跡がかなり認められる。しかし『ダイアローグのことばについて』の内容を知らない多くの読者にとって,本論文を読んでいることを前提に書かれたかのように思われるこれらのバフチンの抽象的なテキストを読解することは,これまで困難であった。しかし本論文に目を通すことで,これまで不明確であったバフチンのテキストの具体的な解釈像が見えてくるかもしれない。
本書はこのヤクビンスキー論文の邦訳とその解説の他,バフチンがダイアローグ論を展開する上で参照・引用した論文や文学作品における議論,またこれらのテキストに掲載された様々なコミュニケーション事例を紹介し,具体的な社会実践における相互交流のあり方を考える際の理論的枠組みを提供するものである。

編著者のコメント

田島充士(大学院総合国際学研究院)
本書は日本におけるバフチン研究の権威である桑野隆氏(元早稲田大学)と,本学ロシア語専攻出身(しかも私と同期)の朝妻恵里子氏(慶應義塾大学)の協力を得て執筆を行ったものです。ここ10年ほど,私はバフチンの書斎の書棚をイメージし,彼の論文に引用されているテキストを収集しては読むという作業を進めてきました。その中で出会ったヤクビンスキー『ダイアローグのことばについて』は,バフチンが意識したと思われるコミュニケーション事例が豊富に掲載されていることもあり,もっともインパクトの大きな資料の一つでした。バフチンの著作には,確かに読者独自の解釈を拒絶するかのような手強さがありますが,同時に,しびれるほどの簡潔で美しい世界観を感じとることもできます。バフチンが彼の世界観を構築した際に引用したと思われる,多くの社会実践事例を紹介することで,読者が自分自身の「ダイアローグ観」を創造する際のお手伝いができればとの思いで,この本を企画しました。
理論的な話が中心ではありますが,著者が実際に取り組んできた学校教育においてみられる様々な問題も紹介し,その解決策を考える上で,これらの理論的視座が具体的にどのように役立ち得るのかを論じることもしています。


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