千年の眠り

2021年11月12日
呉世栄(著)徐載坤、林陽子(訳)
港の人

内容の紹介

現代韓国で世代をこえて愛されている詩人・呉世栄(オ・セヨン)の名作をセレクションした詩選集『千年の眠り』刊行。解説:徐載坤(ス・ゼコン)/呉世栄年譜

現代文明社会の危機をいかに克服するのか、世界の喫緊の課題であるが、詩人・呉世栄は人間と自然が調和し融合するという道を追究し、社会と人間への愛情をあらわす詩の世界を展開している。(出版社の新刊紹介文より)

「私」というのは独立した実在でなく、他人との関係性によって規定される存在論的な現象を、便宜上、そう呼ぶことに過ぎないということも悟りました。それは個人と個人、民族と民族の問題においても同じだと思います。そのような意味で、「詩」とは、この地上で、個人や民族のレベルではなく、人類の普遍的な理想の実現を目指す精神的価値ではないかと思います。
近代史において、韓国と日本の間には、紆余曲折と民族的葛藤がありました。しかし、遡って、原型(archetype)を探すと、歴史的に、古代日本の国家形成に大きな役割を果たした百済の滅亡と、そこから生じた恨みの感情が、もしかしたら、日本人の集団意識の中に深く根を下ろしているのではないかと、勝手に想像しています。(『千年の眠り』「日本語版序文」より)

訳者のコメント

徐載坤 ス・ゼコン(東京外国語大学 大学院国際日本学研究院 元特別招へい教授)
呉世栄(オ・セヨン)は現代韓国の代表詩人で、大韓民国芸術院会員である。一九六五年に登壇し、五〇余年間、創作活動を続けて、約三十冊の詩集・禅詩集・時調集を刊行した。その一方で、一九八五年から二〇〇七年まで、ソウル大学国文科の教授として在任しながら、詩論・評論家としても活躍した。
彼は韓国現代詩の歴史そのものであり、世代を超えて愛されている。その理由は、第二次世界大戦以後、植民地からの独立回復、その後の近代産業化と民主化のプロセスを経て先進国の仲間入りをするまで、世界で類のない激動の現代韓国社会を、彼独自の感性で抒情詩の領域で詠みあげてきたからである。
初期には、韓国の伝統社会が産業化によって崩壊していく様子を、伝統的抒情性の否定と解体の作業を通じて描いた。中期の詩の世界では、独裁政権下における時代の不条理を現代人の実存的な悩みに重ねて、仏教と中庸のような東洋思想に基づいて形而上学的レベルに昇華させた。その後は〈自然抒情詩〉と称される作品世界が現れ、現代文明社会の危機を人間と自然の調和・融合で乗り越えられるという詩人自身の信念を、社会と人間そのものに対する愛情で表出している。
彼の長い詩的道程はイメージの造形、存在の探究、東洋的な精神世界の追究、文明と現実への批判、自然との合一、寂滅への無言の精進と要約できる。(『千年の眠り』「解説」より)


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