私たちが字幕翻訳・同時通訳を担当します! 〜TUFS Cinema 日本-フィンランド外交関係樹立100周年記念上映会〜

2019年10月25日(金)に、日本-フィンランド外交関係樹立100周年を記念して、TUFS Cinema(タフシネ)で、映画『東方の記憶(英題:Eastern Memories)』の上映会を開催します。これは、初代フィンランド駐⽇公使であるグスタフ・ラムステッドの訪⽇記録とモンゴル旅⾏の回顧録をもとにしたドキュメンタリー映画です。本編上映後は、作品の監督であるニクラス・クルストルム監督とマルティ・カルティネン監督、フィンランドセンター所長のアンナ=マリア・ウィルヤネンさんをゲストにお迎えしたトークも予定しています。

今回の上映会にあたり、作品の映像字幕翻訳と、当日の上映後トークの同時通訳は、本学大学院総合国際学研究科「日英通訳・翻訳実践プログラム」博士前期課程2年の6名が担当します。また、モンゴル語翻訳では、国際日本学部Ⅰ年のモンゴル人留学生が協力しました。

担当する学生と、企画者である教員らにインタビューしました。

私たちが字幕翻訳を担当しました!

まずは、字幕翻訳を担当した3名の学生(博士前期課程2年の、植松久美子さん、佐久間敦子さん、前田貴陽さん)にインタビューしました。

——字幕翻訳を担当していかがでしたか。

植松さん

植松さん:字幕作成からは、さまざまな収穫を得ました。まず、作品内容から知識的収穫がありました。モンゴルやフィンランドの歴史・文化を学ぶことはもちろん、外国から見た日本の姿を再発見できたからです。次に、技術面についてです。字幕ならではの字数制限のある翻訳環境では、短文で的確に内容を伝えることが重要です。そのために、原文を文字通り訳すときより、さらに深い時代設定や宗教文化への理解が必要でした。ただ、理解したことを濃縮して短文に落とした際、本当に誰が見てもわかりやすいか、再考する場合も多くありました。作者の意図を汲むと共に、オーディエンスからの視点を忘れてはいけないと、翻訳の基礎を見直すことができた点が技術的収穫です。今回の学びを活かし、今後も精進していきたいと思います。

——特に苦労した点はなんですか。

佐久間さん

佐久間さん:字幕は秒数によって表示できる文字数が決まっていますので、その限られた中でどれだけわかりやすく訳出できるか、とても悩みました。あまりなじみのないモンゴルの文化や仏教についてもこの映画では語られていますので、モンゴルからの留学生の方にもご協力いただいて理解を深めながら翻訳していきました。作成した字幕を一度映像にあてていただき、その後もう一度読みにくい箇所を相談しながら修正しました。実際に映像とともに字幕を見ると、文章の区切りや漢字の多さなどの読みにくさにも気づくことができました。翻訳チーム・通訳チーム合わせて長い時間話し合いながら訳出を考えることができ、非常に貴重な体験になりました。未熟なところも多い翻訳かと思いますが、できうる限りの良いものになったのではと思っています。

——うれしかったこと、そしてアピールポイントは。

前田さん

前田さん:私自身「TUFS Cinema」というイベントが大好きで、今まで何度も足を運び、多くのことを学びました。内容の重みを考えると1つのイベント自体、決して長い時間ではありません。自分が全く知らない世界を垣間見る、素晴らしい瞬間として私は大切にしています。今回、このような素敵なイベントで上映される映画の、字幕翻訳を担当することになりました。作品はモンゴル、フィンランド、それから日本をテーマとしており、ナレーションと映像が創り出す雰囲気は格別です。私が担当したのは後半部分で、日本社会について取り上げている部分が多く、歴史的背景の把握や作者が表そうとしている雰囲気を掴むことが重要だと感じました。この作品は一度見るとクセになる、ひと味違った面白いドキュメンタリーです。現代での生活を振り返る、良い機会になると思います。当日は通訳担当者のサポートを全力で行いたいと思います!

——作品、そして字幕を、楽しみにしています。ありがとうございました。

私たちが同時通訳を担当します!

続いて、当日の同時通訳を担当する3名の学生(博士前期課程2年の、小倉杏奈さん、中野志保さん、平田慧さん)にインタビューしました。

——本番まであと数週間ですね。準備の方はいかがですか。

中野さん

中野さん:今回、TUFS Cinemaという大きなイベントでの通訳を担当できることになり、大変嬉しい気持ちと緊張感を感じています。通訳担当として、10月の上映会に備えて、7月に行われた『星砂物語』の上映会に参加し、どのような雰囲気でイベントが進められているのかなど、会場の雰囲気を感じる下見を行いました。本コースでは『東方の記憶』の字幕制作も行っているので、そのためにいただいた資料やできあがった字幕を読み込み、上映される映画の視聴を通して、映画の内容理解に努めています。当日、自信をもって通訳を行えるよう、コース生と通訳のスキルを高めていきたいと思います。

——準備する中で勉強になっていることなどありますか。

小倉さん

小倉さん:予習として『東方の記憶』の鑑賞や事前に頂いた資料の読み込みなどに取り組むなかで、フィンランドやモンゴルの歴史、さらには日本との関係についての理解を深めることができ、大変勉強になっています。このような大きな舞台で通訳をする機会をいただき、喜ばしいとともに緊張も尽きませんが、当日に良いパフォーマンスができるよう、準備を万全にして臨みたいと思います。

——本番に向けて、どんなトレーニングをされていますか。

平田さん

平田さん:関連書籍を読んだり、映画を何度も観たりといったことから、通常時も行なっているシャドーイングやクイックレスポンスまで、さまざまな準備やトレーニングをしています。大勢の方が聞いている中での通訳は初めてなので緊張もしていますが、なるべく分かりやすく、そして忠実に情報をお届けするという通訳の務めを果たせるよう一生懸命取り組ませていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

——当日に向けて、どうか体調も整えてくださいね。ありがとうございました。

同時通訳の授業風景

モンゴル語翻訳を協力しました!

作品ではモンゴルを舞台としたシーンもたくさん登場します。モンゴル語の字幕翻訳では、モンゴル人留学生の国際日本学部1年生、アイベク・アイヌルさんに協力していただきました。

——どんなことを協力しましたか。

アイヌルさん

アイヌルさん:My contribution to the Eastern Memories Project was the translation of one of the poems in the movie from Mongolian to English. To me, every literary work seems to have its own nature and characteristic. The poem I translated was considerably hard to understand, even in Mongolian, because it had a vague nature to it. The meaning of the poem was abstract, so I had to try hard to understand the meaning. ((訳)私は「東方の記憶」に登場する詩をモンゴル語から英語に訳すお手伝いをさせていただきました。文芸作品は独自の意味合いを特徴があると思っています。担当した詩は漠然とした内容で、モンゴル語でもかなり難しかったです。抽象的な表現が多く、その意味を理解するのには苦労しました。)

——一番むずかしかったことは。

アイヌルさん:I think the most challenging part of my work was trying to create that same vague effect whilst verbally translating the written text. I have learnt that it is important to understand the poem properly, so that we can convey the poet’s message the way he wanted to, in another language. I have learnt and understood many things throughout this process and I am very thankful that I got the chance to participate in this project. ((訳)一番むずかしかったのは、詩の抽象的な効果を書き言葉でも表現することでした。詩の意味を正しく理解することの大切さを知りました。別の言語に訳すとき、詩人の意図を正しく伝えることが必要だからです。今回のプロジェクトに参加させていただき、多くを学びました。このような機会をいただき、とても光栄です。ありがとうございました。)

——ありがとうございます。当日が楽しみですね。

企画者インタビュー

今回のタフシネは、大学院国際日本学研究院の春名展生准教授と、留学生支援などを担当している石田理恵特定研究員が企画・アレンジしました。お二人に、企画のきっかけや見どころなどについてお話しを伺いました。

右:春名展生准教授 左:石田理恵特定研究員

——まずお伺いしたいのですが、春名先生のご専門は、政治学や国際関係論でしたよね。フィンランドとのつながりは。

春名:フィンランドとはいろんな縁があります。東京外大に来る前に教えていた学校で、フィンランドからたくさんの交換留学生を受け入れていました。その時の教え子たちと今でも交流があり、そのうちの1人がフィンランドのオウル大学の国際コーディネーターを担当しています。その関係で、本学とオウル大学との協定担当もさせていただいています。今回の企画は元々、石田さんから相談をいただきましたよね。

石田:はい、フィンランド人の知り合いから、外交関係樹立100周年記念の映画を用意しているので、日本の教育機関で上映し、トークセッションなども行えないか、との相談を受けました。その時に、以前からよく参加していたTUFS Cinemaが真っ先に思い浮かびました。オウル大学の協定担当だった春名先生に相談して、一緒に企画を練り始めました。勉強会にも参加しましたよね。

春名:本作品は、初代フィンランド駐日公使であるグスタフ・ラムステッドの100年前の訪日記録とモンゴルを旅行した記憶を元にした映画です。フィンランドについてもラムステッドについても、もともと専門ではありませんので、これはまず勉強しなければならないと思いました。いろいろ調べていたところ、「日本フィンランド協会」が、ラムステッドに関するさまざまな講演会を開催していることを知りました。

石田:あれは確か今年の3月でしたね。ふたりでラムステッドに関する勉強会に参加しました。

春名:その時、ラムステッドについて講演をしていたのが、今回トークセッションでお招きするフィンランドセンター所長のアンナ=マリア・ウィルヤネンさんです。その縁でトークセッションにも来ていただけることになりました。

——いろんな縁がつないだ上映会なのですね。今回の企画で工夫した点は。

石田:上映会を企画する段階で気がかりな点が2つありました。1つは、上映作品の日本語字幕が準備されていなかったこと。もう1つが、登壇者はフィンランド人である本作品の監督などをと考えていたため、トークの通訳です。そうした時に、本学大学院の「日英通訳・翻訳実践プログラム」を担当している内藤稔先生と西畑香里先生に相談しましたら、先生方も学生の皆さんも喜んで引き受けてくれました。監督に本学の特色などを説明したところ、快諾を得まして、字幕翻訳とトークの同時通訳を大学院生6名が分担して担当することになりました。

春名:本作品ではモンゴルでのシーンがたくさんありますが、通訳・翻訳プログラムの学生の中にモンゴル語のわかる学生はいませんでしたので、今年国際日本学部に入学したモンゴル人の留学生に声をかけて、モンゴル語翻訳に協力してもらいました。通訳・翻訳を通じて、より多くの方に知見を共有していくというだけでなく、この翻訳・通訳の作業自体が、教育の実践になっていて、これは研究と教育が両立しているプロジェクトだと思いました。

——映画のみどころは。

石田:映画をご覧になって感想はさまざまだと思います。今回、フィンランド映画なのですが、フィンランドは一度も出てきません。北欧の森と水のイメージを持ってしまうと違うので、そこを少し心配しています。歴史的に、日本とフィンランドとの外交の歴史は100年だということを知らない人は多いと思いますので、それを知るきっかけになるとよいなと思います。ラムステッドは、元は言語学者なので、日本にいた際も、公使という立場でありながら、柳田國男や宮沢賢治とも交流をもっていました。そういった点が、身近、というか日本に根付いた方だったのだと感じました。

春名:そうですね。ラムステッドは10年間日本にいましたので、人脈が広かったようですね。映画の他に、ラムステッドが書き残したものをいろいろと目を通して見ました。おそらく彼は、フィンランドという新しい独立国で、外交官という存在がいない中、東洋の言語を知っているということで、アジアのいくつかの国の大使に任命されました。言語学者ですので、外交官としての職責もしっかり果たしてきたことを書き残したかったのでしょうか。書き残した中には、政治家や皇室の方との会話をかなり書き残しています。私たちが日本近代史を勉強しても目にすることのないような、外交、国際関係、政治の一幕というのがたくさん書き残されていて、そういう部分もとても面白いと思いました。それは映画の中には出てきませんが、背景にそういったことがあるというのも面白いと思います。旧ソ連から独立したばかりのフィンランドで、強いナショナリズムを持った人だったと思います。一方でエスペラントを勉強していたり、ある種、国際主義とナショナリズムという緊張の中にいたのだと思います。モンゴルが辛亥革命の後に独立しましたが、彼はそのモンゴルの独立を後押ししているのですね。日本にいる間は、朝鮮語を学んでいました。実は、英語で書かれている最初の朝鮮語の文法書はラムステッドが書いたものです。ということはたぶん、日本帝国の中での朝鮮独立ということについても、ある程度好意的に考えていたのかもしれません。帝国秩序の中でのナショナリズムと国際主義という、場合によっては対立する二つの要素を自分の中でどう整理していたのか興味深いところです。

石田:あとは、映画を観ていると、人間が最初に文化的違いに直面したときに感じるであろう心の動きは当時も今も変わらないのだと感じましたね。その意味で共感を覚える場面は多いのではないかと思います。

——トークセッションも楽しみですね。

石田:はい、トークもそうですけど、学生たちが担当する字幕と同時通訳にも、ぜひ注目していただきたいです。学生たちの頑張りをぜひ見ていただきたいと思います。通訳担当の皆さんは緊張していると思いますが、相当に準備しています。私が想像していた以上に、学生たちは皆、とても熱心に、真剣に取り組んでいます。

春名:私は責任を感じています。私の司会で、トークがあらぬ方向に行ったりすると、学生たちを困らせるんだろうなあと(笑)。

石田:それも含めて準備されているとも思いますので、ぜひぜひご注目ください。

——字幕・通訳に大注目ですね。本日はどうもありがとうございました。

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