Humans of TUFS 「ペルシア語・イラン地域専攻学生の主体的な学びの場をつくりたい」イラン研究学生機構(J-SOIS)田代智恵子さん・村山木乃実さん

「イラン」と聞いたとき、あなたは何を思い浮かべますか?
…「危険な国」「なんだか怖い」。緊迫したイラン情勢が毎日のように報じられる今、そんなイメージを抱く人もいるかもしれません。
そのような中、「イラン月間」というイベントが2月1日(土)から1ヶ月間、都内のカフェで開催されます。主催するのは、本学でペルシア語やイランについて学ぶ学生が立ち上げた「イラン研究学生機構(J-SOIS)」です。
彼らがどのような思いで活動し、「イラン月間」開催に臨むのか。団体代表を務める田代智恵子さん(本学大学院博士前期課程、ペルシア古典文学専門)、団体立ち上げ人で「イラン月間」広報を担当する村山木乃実さん(本学大学院博士後期課程、宗教学・ペルシア文学専門)にお話を伺いました。

イラン研究学生機構(J-SOIS)について

村山さん

——J-SOISとはどのような団体ですか?

村山:J-SOISは2017年に東京外大のペルシア語専攻の学生が立ち上げた団体です。ペルシア語やイランについて学ぶ東京外大生が、主体的に興味のある分野について学んだり、情報交換できる場を提供することを理念として活動しています。

——団体立ち上げの経緯を教えて下さい。

村山:東京外大でペルシア語を学んでいる人たちは、必修のペルシア語の授業でお腹いっぱいになってしまって、肝心の3年次ゼミ選択の時にイランやペルシア語から離れてしまうことが多く、すごくもったいないと思ったんです。なので、大学の授業から離れたところで、自分の興味のある視点からペルシア語・イランに触れる機会があるといいかなと思い、団体立ち上げに至りました。

——具体的にどんな活動をしていますか?

田代:活動の主軸はWebマガジンの発行です。東京外大でペルシア語を学んでいる学生が、それぞれの持つ興味分野の視点から自由に記事を書き、それらをまとめたWebマガジンをJ-SOISのホームページに掲載しています。

村山:発足2年目からは活動を広げ、ペルシアの詩と音楽のライブ演奏会、イランの写真展、学外のカフェでイラン料理を提供するイベントなどを開催してきました。

写真展「写真とペルシア詩で旅するイラン」(2018年秋)を準備中の村山さん・田代さん

——活動の成果は見られますか?

田代さん

村山:一般の方にペルシア語やペルシア文化、イランについて知って頂く機会という意味では、かなり貢献できていると思います。

田代:そうですね。一方で、ペルシア語専攻の学生に対するアプローチという点ではまだ達成できていないことが多いです。今までは外部へ情報を発信する機会が多かったので、今後はペルシア語の学生が学内で集まり、それぞれ興味のあるテーマについて話し合うような企画をしようかと考えています。

学外イベント「イラン月間」について

——そんなJ-SOISが、2月から学外でイベントを開催すると伺いました。

村山:「イラン月間」というイベントを2020年2月1日(土)~29日(土)、大岡山駅近くのカフェ「Toi Toi Toi」で開催します。

田代:ペルシア語やイランについて勉強しているけれど、具体的にどんな角度から勉強を進めていけばいいか、どのように自分の興味を深められるかという道筋が見えてない人に参加して欲しいという気持ちで、企画を進めています。本イベントではイランの文学と文化をテーマとして、3つの企画をご用意しました。

企画① サロン

田代:本イベントのメイン企画。研究者や専門家に、学生や一般の方向けにお話しをしてもらい、意見交換や質問の時間をとり、近い距離感で交流してもらうという企画です。サロンでの発表は4回にわたります。

イランの燭台

村山:第1回は、イスラーム美術の中でもセラミック(陶器)やメタルワークなどの工芸品がご専門の神田惟さんによる発表です。ある時代を境に、セラミックに書かれる銘文がアラビアのことわざや祈願文からペルシア詩に変わり、しかもそのセラミックにちなんだ詩が選ばれているものもあるとのこと。神田さんはそれらの詩の意味も踏まえセラミックの研究をされているパイオニアです。神田さんのご発表は、美術研究とペルシア文学研究の接点がわかる内容だと思います。

田代:第2回は、「サラーム・サラーム」というユニットでイランの絵本の紹介活動を精力的になさっている愛甲恵子さんのトークです。現代イランの絵本の魅力をお話しして下さいます。

田代:第3回は、ペルシア現代詩の研究をしている中村菜穂さんと、ペルシア古典詩の研究をしている私・田代の対談です。現代詩人による古典詩人のフィーチャーの仕方に焦点を当て、古典詩と現代詩がどのように関係しているかをお話しします。

村山:第4回は、ペルシア語の「取立詞」である「ハム(هم)」と「ケ(که)」について、言語学の観点からペルシア語を研究している大久保弥さんの発表です。ペルシア語にどのような観点からアプローチできるかがわかると思います。

——なるほど。ペルシア文学・イラン文化ひとつとっても、さまざまな切り口があるのですね!

村山:漠然とペルシア語を勉強しているけれど、その学びが何に結びつくのかわからない学生たちに、「こういう観点で触れられるんだ」「こういう経緯を辿って研究に行き着いたんだ」という新しい発見をしてもらい、自分がペルシア語やイランの勉強を深めるきっかけにしてくれたら嬉しいです。

田代:また、今回の企画のターゲットには大学生だけでなく、高校生・中学生も入れています。若い人たちの研究心を大事にし、ペルシア語への興味を温かいままに保つような機会にしたいですね。

企画② イラン料理の提供

田代:料金には150円が上乗せされていて、これが今回の発表者たちの研究支援金としてバックされることになっています。イラン料理を食べてもらいながら、研究について興味を持つきっかけにつなげてほしいという気持ちからです。

企画③ イラン絵本の常設展示

イランの絵本

田代:「サロン」の発表者でもある愛甲さんによるイランの絵本の展示です。日本語のあらすじも付いているので、絵本を実際に手に取って楽しんで頂きたいです。イランの絵本は色遣いが独特で、とても美しいんですね。国際的にも評価が高いのですが、日本での知名度はまだ低いので、多くの方にその魅力を知って頂ければと思います。展示している絵本の一部やポストカードなどの物販もする予定です。

——「ニュースも授業も教えてくれなかった、イラン文化を探求する」というキャッチコピーについて。年明け早々にイラン革命防衛隊精鋭組織「コッズ部隊」の司令官が殺害された事件以降、毎日のようにイラン関連のニュースが見られます。このキャッチコピーはそれを受けて考えたものですか?

田代:いや、このキャッチコピーを考えたのは昨年12月なので、まだ今のような状況になる前だったんですよ。イベントの企画自体、始めたのがそれより前でしたから…

村山:年明けのニュースで「イランは危ない」という印象がついてしまっているかもしれませんが、イランが長い歴史をかけて作り上げてきた、豊かな文化的側面を知ってもらいたいなと思っています。

J-SOISの活動にかける思い

——最後に、イラン情勢が刻々と変化していく様子が報じられている今、どんな思いでJ-SOISの活動をしていますか?

村山:あのような事件が起きると、どうしても政治や外交問題だけに焦点が当てられてしまい、私たちと同じように、人間がそこで落ち着いた生活をしているという事実が隠れてしまうんですよね。だからこそ、イランには日々刻々と変化する政治・外交面では捉えきれない、不変的・文化的な側面もあることを、普段からペルシア語やイランのことを学んでいる私たち学生が知り、少しでもいいから発信していくことが大事かなと思います。今回のイベント「イラン月間」は、その観点からも意義があると感じます。

田代:毎日、衝撃的な映像ばかりがニュースで流れるので、「そこにはどんな人たちがいるんだろう」「話してみたらどんな風だろう」って思いを馳せる人は少ないと思うんですね。そんな中で、イランに行ったこともあるし、ペルシア語でイラン人と話したこともあるという、日本でも世界でも貴重な存在と言える東京外大ペルシア語専攻の学生たちが「自分の視点から見たイラン像」を一つ持って、他の人に伝えていくのが大事だと思っていて。J-SOISはそういう思いを持つ人たちの集まりになればいいと考えています。

——J-SOISの今後の活動に期待しています。本日はお話ありがとうございました!

聞き手:Humans of TUFS


下記URLからJ-SOISのホームページにアクセス頂けます。
http://j-sois.noor.jp/
お話の中で触れられたWebマガジンや「イラン月間」のお知らせが掲載されていますので、こちらも是非ご覧ください。

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