シリーズ「なぜその言語?~東京外大生に聞いてみた!~」第1回「海老原大誠さん:中国語」

東京外国語大学の学生は必ず1つ専攻語を選んで入学しますが、なぜその言語を選択したのか、その言語を学んでどのような展開があったのかなど、他の学生の考えが気になったことはありませんか。また、東京外大の受験を考えている方の中にも、どのように言語選択をしたらよいのか、どのような勉強が出来るのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで、『なぜその言語?~東京外大生に聞いてみた!~』と称して、在学生に自身の経験をお話していただくこのシリーズが始まりました。

第1弾は、海老原大誠(えびはらたいせい)さん(国際社会学部東アジア地域/中国語3年)にインタビューしました。本学の国際社会学部は、1・2年で身につける専攻言語・地域の基礎的な教養を礎に、3・4年で専門性を深める学びが特色です。台湾研究のゼミに所属する海老原さん。台湾そして中国語との出会いや学んだ教養をどのように研究に生かしているかについてお話を聞きました。

取材担当:国際社会学部東アジア地域/中国語2年 長谷部結衣(はせべゆい)さん(広報マネジメント・オフィス学生取材班)

台湾への興味から東京外大入学へ

——最初に、台湾に興味を持ったきっかけを簡単に教えてください。

はい、幼稚園の時に、母の友人が台湾の台北に住んでいて、母が私を連れて友人に会いに台湾に行きました。それが、最初のきっかけだと思います。その後、台湾には、全て短期の旅行で渡航しています。これまでに16回行って、新型コロナウイルスの影響で1回キャンセルしています。

——16回!!すごいですね。海老原さんは、台湾の魅力はどこにあると思いますか。

僕にとって台湾は、台湾以外の中華系の文化などの全ての入口になりました。中国語や中国語の方言、マレーシア、シンガポールなどにも興味が広がり、新しい知識や言語を手に入れることができました。いろいろなものの入口になっているのも、僕にとって台湾の魅力の一つかもしれません。

——台湾、そして中国語に興味を持った後、東京外大入学前に中国語の学習はしていましたか。

台湾に興味を持ってからは、少しずつ中国語に触れるようにしていました。近所の洋服屋さんのオーナーが中国の人でしたので、小学生の時に、その人の教室に通ったことがあります。あとは本などを使って独学で勉強していました。台湾に興味を持ってから、通訳を介さずに台湾を「そのままの形で見たい」と言う思いが必然的に芽生えてきました。その思いが、マレーシアや他の国々に興味を持った後、マレー語や他の言語を学ぶきっかけにもなっていると思います。

——他の大学でも中国語を第二外国語として勉強できるところが多くありますが、なぜ東京外大の中国語専攻で勉強しようと思ったのでしょうか。

あまり進学について深く考えていませんでしたが、たまたま東京外大について聞いて調べてみたら、言語学習がメインでかつ地域研究などもできるところに魅力を感じ、やりたいことで言ったら東京外大しかないと思い、東京外大を選びました。

充実した東京外大での学び

——実際に東京外大で中国語や地域研究を学習してみた感想を聞かせてください。予想外だったこと、大変だったことなどはありますか。

東京外大は課題が多いと言われていますが、特に「読解」という科目になると言語を問わず、たくさん予習しなければなりません。それは大変だったなと思います。予想外だったことは、「〇〇語に興味がある。ちょっと調べてみたい」と思った時に、それができる環境が思った以上にすぐそばにあること。それも数十言語ではなく、授業科目だけでも80言語くらいあります。ちょっと何かに興味を持った時に、すぐ手に取ったり、あるいは授業を履修したりすることができる環境があるのはすごく魅力的に感じます。

——実際に今までで、東京外大に入ってから興味を持ったことにはどんなものがありますか。

マレーシアですね。1年生の時に、たまたまマレーシアに行く機会があって、行ってみたら中国語も使えるし、すごく楽しかった思い出があります。そのため、独学でマレー語を始めたり、あとはマレーシアの授業を履修してみたりしました。その時も、興味を持った国や言語にすぐ触れることができる環境があることの良さを実感しました。

——マレー語を勉強しているとおっしゃっていましたが、東京外大に入学してからどれくらいの外国語を学習しましたか。

今は中国語とマレー語をメインに学習しています。あとは、香港にも興味があるので、広東語と台湾語も学習しています。中東方面の言語にも興味があって、最近はヘブライ語も履修しています。日本で生活をしていたらあまり触れることのない言語なので、興味深く授業を受けています。授業を履修したのと、独学でかじっただけというのもあるんですけど・・・全部で9言語ですね。英語、中国語、台湾語(福建語)、広東語、マレー語、ヘブライ語、アイヌ語、スウェーデン語、スペイン語の9つです。実際に身についているかどうかは別として、いろいろな言語に触れてきました。

——実際に東京外大で学習する前の台湾の見方と、学習した後の見方では違いはありますか。

残念ながらここ最近は渡航できないので、実体験としてはわからない部分もあります。ただ、今思っているのは、東京外大での学習を通して、台湾の民族的多様性(閩南(ビンナン)系、客家(ハッカ)系、原住民など)への理解がより深まりました。あとは、台湾や台湾政治に関するニュースをよく読めるようになりました。またいろいろな知識を得て、入学前に考えていたことは誤解だったのだと気づくことも多くあります。

——自分で頑張って調べてみても得られる情報は限られていますよね。東京外大でその分野の専門家の先生の授業を受けて、世の中で出回っている知識で間違っていることもあると気づかされたこともありました。

1・2年で言語を習得し、3・4年で興味のある学問分野を深める

——次に所属するゼミについて教えてください。

国際社会学部で、台湾の政治研究を専門にしている小笠原欣幸(おがさわらよしゆき)教授のゼミに所属し、台湾を政治的なアプローチから研究しています。私は台湾の民族グループ、例えば閩南系や客家系の人々の分布や言語について研究しています。同じゼミには、台湾企業に関する研究や最近話題の中台関係について政治研究を行っている学生もいます。基本は、台湾に絡んでいれば何でも研究できる環境です。

——海老原さんがおこなっている研究について詳しく教えてください。

台湾が最近東南アジアとのつながりを強めている話を聞いて、マレーシアと台湾を繋げた研究をしたいと思っていました。シンガポール・マレーシアの華人と台湾人のつながりが濃くて行ったり来たりしているのではないかと思い、最初は東南アジア諸国と台湾を絡めた研究をしたかったのですが、いざ研究を始めてみると、思ったより台湾とマレーシアのつながりが薄いことに気づきました。そこでまずは、台湾の外国人労働者や、結婚などを理由に中国や東南アジアから台湾に移住した、現地では新住民と呼ばれている人々について研究しています。ついこの前は客家という台湾のエスニックグループについて発表して、次回はそこから派生して台湾内の言語や教育状況についての発表ができたらと思っているところです。

——なるほど、とても面白そうですね。1・2年生で中国語をたっぷり学習したと思いますが、その学習がゼミの研究にどう生きていると感じますか。

情報収集の際に生きていると思います。国際社会学部・地域社会研究コースの研究では、やはり現地で話されている言語を介さないと情報が限られてしまいます。例えば現地の行政機関がおこなっている調査や現地の新聞記事など、もちろん簡単には読めないんですけど、それらが自分の情報として入ってくるのはすごくありがたいと感じています。

——東京外大の図書館に中国語の蔵書がたくさんありますが、それらを研究で使うこともありますか。

ゼミの発表の前によく図書館に行きますが、今はグラフやニュース記事を中心にゼミの発表を進めています。

一生中国語と付き合っていきたい!

——将来中国語をどのように生かしていきたいと思っていますか。

正直なところ、中国語だけでなく他にも興味があるので、主軸にする必要はないかなと思っています。ただ、一生付き合っていきたい言語であることは確かだと思います。今後どういう形で台湾などに関わっていくにしろ、中国語のおかげで台湾だけでなく、マレーシア、シンガポールなどいろいろなことを知ることができました。​​中国語でニュースが配信されている地域も多いので、中国語でニュースが読めると、ニュースで知ることのできる内容の幅も広がります。やはりそういう意味では、自分にとって欠かせない言語だと思うので、一生このレベルを落とさずにいきたいと考えています。中国語を使った仕事などは現時点では明確には考えていませんが、使えるに越したことはないと思います。実際に、アルバイトをしている飲食店にたまに中華系のお客さんが来るのですが、そこで中国語で話せるのはすごく嬉しいです。そういう経験があると言語学習も楽しいなと感じます。隙間時間に、これは中国語で何ていうんだろう・・・と調べて脳内シミュレーションをしています。

——コロナ前は、中国以外にも台湾やシンガポールなどのお客さんが私のアルバイト先にも来て、中国語を話していました。中国語を話せると本当にさまざまな国・地域の人と交流できますよね。

このコロナ禍の状況だと外国語を話す機会が限られてしまうのは残念ですね。昨年マレーシアやシンガポールに行く予定で、中国語・マレー語・台湾語を話してみたいと思っていたのですが、残念ながら行けなくなってしまいました。渡航できるようになるのをすごく楽しみにしています。中国語が入口となっていろいろな言語を学習できたおかげで、世界が広がりました。

編集後記
私も同じく中国語を専攻していますが、他の学生が一体どんな理由で中国語を専攻することになったのか、実は知る機会が今までなかったので、今回海老原さんのお話を興味深く聞かせていただきました。些細なきっかけからでもさまざまな言語や興味を深めようとする積極性は、15地域28言語の教育体制を備える東京外大での学びにおいて、非常に大事なことかもしれません。これまでに9言語を学んできたという海老原さんは、言語以外にも電車や音楽など、多趣味な方で、お話を聞いていて、とても楽しかったです。取材に協力いただき、ありがとうございました!
長谷部結衣(国際社会学部東アジア地域/中国語2年)

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