アニメフェスティバルでインターンシップ! ~日露ビジネス人材の育成~

2017年度から推進している大学の世界展開力強化事業(ロシア)「日露人的交流の飛躍的拡大に貢献するTUFS日露ビジネス人材育成プログラム」では、活動の一環として学生のインターンシップを実施しています。

今年2020年11月14日(土)~15日(日)に行われた日本アニメと日本文化の魅力が詰まったモスクワ最大級のアニメフェスティバル「J-Anime Meeting in Russia」(日本映像翻訳アカデミー株式会社(JVTA)主催、本学共催)。本学の学生がJVTAへのインターンシップを通して、当イベントの企画、運営をおこないました。オンラインでの開催という初の試みでしたが、双方の学生が協力することで、たいへん盛況なイベントとなりました。参加学生のインタビューも交え、その活動をご紹介します!

インターンシップの概要(新井滋 特任教授インタビュー)

まず、今回のインターンシップの経緯や概要を、本事業コーディネーターである新井滋特任教授に伺いました。

——今回、どのような経緯で、「J-Anime Meeting in Russia」にインターンシップで学生を送り出すことになったのでしょうか。

「日露ビジネス人材の育成」。これが、本学が取り組んでいる「大学の世界展開力強化事業(ロシア)」のテーマです。企業でインターンシップを行うことは、将来のビジネスパーソンとして身につけるべき交渉力・調整力といったコンピテンシーを涵養するために、学生にとって最適な機会であると考え、事業開始以来、さまざまな業種の企業での就業体験の機会の提供を図ってきました。
受入企業の開拓を進めるなかで、2019年の初めに、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)と巡り合い、同年3月頃から本学およびロシア協定校の学生のインターン受入先としてご協力いただくようになりました。ロシア語、日本語を専門的に学習している学生たちにとっては、翻訳を伴う字幕制作とその関連業務、さらに同社のロシア市場展開事業にかかわる就業体験は、非常に有益かつ親和性の高いものといえます。1ヵ月当たり2人ずつのペースでインターンを受け入れていただき、それが軌道に乗り始めた同年6月頃にJVTAから、学生が主役となる「J-Anime Meeting in Russia」の企画案のご提示をいただきました。新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインでの実施となりましたが、そのとき前提となっていたのは、モスクワの映画館を会場とし観客に来ていただいての上映会を発表の場とすることでした。学生たちにとってこの上ない就業体験チャンスととらえ、全面的に協力し「共催」する運びとなりました。

——2019年度のスタートから、最終的な開催までの全体のスケジュールは、どのようなものだったのでしょうか。

上映会の開催時期なども含め企画の大枠をある程度固め、昨年8月から参加学生の募集を始めました。そして、昨年11月からインターンシップを開始しました。モスクワの大学に派遣留学が決まっていた本学学生にコアメンバーなっていただきました。順調に準備が進んでいましたが、今年に入ってコロナ禍が発生し、5月に予定していたモスクワでの上映会を11月へと延期することになりました。さらに状況の好転が見られないため、実施方法をオンラインに切り替えることを決定しました。そして、11月にオンラインで実施することができました。

——このインターンシップで学生たちは具体的にどのような業務に携わったのですか?

日本でインターンシップというと、短い期間で、責任のある業務を任されることはほとんどないと思われますが、このインターンシップでは、
① 上映作品の選定
② 配給会社と上映権の交渉
③ 上映作品の翻訳、字幕作成
④ SNSなどでのPR活動
⑤ クランドファンディングによる資金調達
⑥ イベントの運営、開催
といったことを参加学生が文字通り「全て」(もちろんJTVAの方々からのサポートはありましたが)主体的に行いました。

ですので、参加した学生にとってはとても有意義な経験になったのではないでしょうか。

——本インターンシップに関わった本学や他大学の学生はどのくらいいるのでしょうか。

参加期間は学生によりまちまちですが、インターンシップを開始した2019年11月から上映会本番までの1年間でこのインターンシップに参加した日本とロシアの学生は79名にものぼりました。そのうち、本学の学生は22名。プロジェクトの規模の大きさから人手が足りなくなり、2020年の8月ごろから他大学に呼びかけて参加してくれたのが21名です。このほか、ロシアの大学に所属するロシア語ネイティブの学生も36名参加しました。

大学ごとの参加人数は次のとおりです。
【日本】
東京外国語大学(22名)、神戸市外国語大学(8名)、上智大学(7名)、大阪大学(2名)、筑波大学(2名)、金沢大学(1名)、近畿大学(1名) 計43名
【ロシア】
モスクワ市立教育大学(19名)、高等経済学院(10名)、モスクワ国際関係大学(2名)、ペテルブルク大学(2名)、モスクワ大学(1名)、ロシア人文大学(1名)、高校生(1名) 計36名

モスクワ市立教育大学以外は、本学の協定校です。

参加学生の声

上映会本番直前に、JVTAが参加学生へのインタビューを実施しました。(その様子はJVTAのYouTubeチャンネルで観ることができます。)

その中から、3名の学生のインタビュー内容をご紹介します。

尾崎成美さん(言語文化学部4年生)

担当業務:上映作品の選定、上映権の交渉、クラウドファンディング等

——数ある作品の中で、どのように作品を選んだのしょうか。

テーマの一つに、「日本を知ってもらうと共に、ロシア人にとっても価値のあるものを考え、提供する」という観点がありました。それに沿うような形で最終的に選定をしました。テーマ決めの段階からとても活発な議論を行ってきました。

——数ある中での絞り込みは大変でしたか。

最終的には皆が納得感を持って決定をしました。一部の作品については権利交渉なども難航して大変であり、残念ながら断念した作品もありましたが、それも含めて大変いい経験となりました。

——テーマごとにチームが分かれていましたが、その中での学生の議論の中身もどんどん変化していきましたよね。

最初「自分の好きなアニメ」が候補に挙げられていたところから、「アニメを通して何を伝えたいのか」といった議論へと変化していきました。これはJVTAの皆様のご助言があったからこそだと思います。学生だけだとなかなか『巨人の星』は出てこないですよね(笑)。生まれる前の話でもあったので、両親等からも情報収集しながらイメージを膨らませました。

——作品を選定した後も、実際に上映交渉に入るとなかなか上手くいかないこともありましたよね・・・

企業の担当の方が親身になって話を聞いてくれましたので、逆にこちらの作成した字幕の買い取り等といった話にまで進んだところもありました。過去の作品だと、中々資料が見つからないものもあり、その点については企業の方にご協力頂きながら粘り強く取り組み、なんとか形にすることができました。

——このインターン、最終的に、ずばり、どうでした?

今後の自分自身の「仕事の選び方」に、影響を与えるものでした。人生が変わるほどといっても過言ではないと思います。

香春汐里さん(国際社会学部4年生)

担当業務:上映作品の選定、上映権の交渉、翻訳、イベントのゲストブッキング等
(2019年9月頃からプロジェクトに参加)

——上映作品を選定する過程でどのようなことを感じましたか。

スポーツに関しての上映作品選定を行いましたが、数多くの作品を提案、検討する中で、最終的に自身が提案した作品を採用してもらえたことは、やりがいにつながりました。選定されたアニメは、さまざまなディレクション(示唆)に富んでいて大変面白いラインナップになったと思います。例えば、『巨人の星』はいわゆる典型的な「スポ根」であり努力を続けていくことが見受けられますが、『GIANT KILLING』は「緻密な戦略に基づき進めていく」といった作品です。スポーツという題材は共通していますが、スポーツへの取り組み方は対照的であるように見受けられ、日本のスポーツ事情の変遷を辿ることができると考えました。

——上映交渉は大変でしたか。

先方企業とのメールのやり取りの数は、大変多くなりましたが、、ビジネスメール作成については、とても勉強になりました。今でもメールを送る前は何度も読み直して送るようにしています。

——このインターン、最終的にずばりどうでしたか。

このインターンシップを通じて、特に「プロジェクトマネージメント」といったことを学べたと実感しています。翻訳作業のスケジュール作成をしたり、トークショー用のイベント進行案を作成したりしましたので、どのようにプロジェクトを進行すればスムーズにいくのか、といったことを学べました。大変なこともありましたが、とても勉強になりました。

Iuliia Iakovlevaさん(サンクトペテルブルク国立大学)

担当業務:翻訳、上映権の交渉
(修士2年次スタートの2019年9月、本学に交換留学で来日してからプロジェクトに参加)

——映像翻訳に携わってみてどんな感想をもちましたか。

正確な翻訳をするためには、日本文化や日本の事情を良く知ることが必要です。ただ、アニメの字幕翻訳の経験を通じて「正確な翻訳」だけでは不十分だということがよく分かりました。ロシアにはない日本の現実を踏まえ、感動的なストーリーやメッセージ、キャラクターの性格などを伝えることが大事です。それと、翻訳に字数制限があるのですが、決められた字数に収めることがなかなか難しかったです。

——このインターンで何か特に印象に残っていることはありますか。

私が個人的に大好きな『ゲゲゲの鬼太郎』の配給会社に上映権交渉に行く機会があったのですが、J-ANIMEに関わる前に、その会社を訪問することになるなんて夢にも思いませんでした。とても感動的な体験をさせてもらいました。
字幕翻訳については、これからも正確でわかりやすい翻訳ができるようになるよう頑張りたいと思います。

JVTA 浅川奈美様インタビュー

今回のインターンシップで学生たちを指導してくださったJTVA経営企画の浅川奈美様にもお話を伺いました。

——インターンシップの中で学生はどのような点で特に苦労し、それをどのように乗り越えていきましたか。

このインターンシップには、「グローバル」、「リモート」、「大人数」、「長期間」、「実業」という5つの大きな特徴があります。さらに一つ加えるとすると、「コロナ時代に行った」ということです。プロジェクト立ち上げ当初(2019年9月)よりICTを最大限に活用し、ほぼすべての業務指導をリモートで行ってきました。学生にとっては受け入れ先企業のスタッフはもちろんのこと、一緒に参加する他の日本人/ロシア人学生たちとも一度も直接会うことなく、長期間のプロジェクトに取り組んだのです。今ではなじみのあるオンライン会議も、当時はほぼ全員が未経験。日露学生みな、多くの戸惑いがあったのをよく覚えています。
Zoom、Skype、Slack、BOX、Googleドライブを導入し、円滑なコミュニケーションを徹底させました。とにかく互いを知ることと、常に各タスクのゴールを共有すること、そして距離も時差も忘れるぐらい互いを身近に感じさせることがカギでした。
毎日のやり取りの中で、誤解や行き違いを体験しながらもグローバルな視点で考え、目的や相手によってロシア語でも柔軟に対応できる調整力、交渉力を習得していったのです。
ある日、ロシア人インターンから「日本人がこれほど熱心に自分の意見を言う国民だとは驚いた」と言われたことがあります。ロシア語でも臆することなく議論し、業務に取り組む日本人インターンを頼もしく思いました。

——今回のインターンシップに参加する前と、参加した後で学生はどのように変化したと思いますか。

数十人のメンバーが共通のゴールに向かってプロジェクトを推し進めるには、良好な人間関係と信頼関係の構築は不可欠です。立場や価値観、言語、文化の違う仲間や上司から、信頼を勝ち取りながら、自分に割り振られた業務を遂行する―まさにリアルな実務体験です。指示をする、依頼をする、議論をする、しかもロシア語で。これは高度なビジネススキルを要します。インターンが日々行う日露両言語でのやり取りは全て実務に直結するのです。緊張感と責任感を常に感じる環境で、「誰か」ではなく「自分が」という主体性が徐々に芽生えていきました。
参加期間が長いインターン生の中には、リーダーへと成長していった学生もいます。プロジェクトの状況を主催者目線で把握し、こちらが指示する前に問題点をみつけ、解決方法を提案し、人を巻き込みアクションにうつせるというビジネスリーダーです。確実に人材が育っていることを実感できた瞬間です。

——「産学協働」を促進するという観点から、このようなインターシップを今後も実施していくことにメリットはあると思いますか。

「グローバル」、「リモート」、「大人数」、「長期間」、「実業」を特徴とするインターンシップは有効であると確信に変わりました。
JVTA の目指すインターン事業とは『主に文系の学生を対象とし、〈グローバルなビジネス体験〉を必須とした〈プロジェクト型の事業創造〉を伴う中長期的な就業体験の場。自社の通例業務への関わりだけではなく、プロジェクトのために募った複数の協力企業や団体、公的機関と共に創設したJ-Anime Meeting in Russiaのようなイベント運営の中で生まれる、極めてリアルな業務への関わりにおいて、文系のインターン生に無二の職業体験を提供するもの』です。高度なグローバル人材の増加により、人的交流、文化交流が活性化するとそこにビジネスが生まれます。業界が活性化されると、就業機会は増加していくのです。
ゆえに語学スキルを活かしながら、異文化理解、メディアリテラシー、マーケティング力、交渉力を兼ね備えた高度なグローバル人材育成にこのようなインターンシップは絶好の機会と考えます。

——最後に、今回のプロジェクトを通じてみえた、インターンシップの将来の展望を教えてください。

コロナ禍で、当たり前が当たり前でなくなってしまった世界。働き方や学び方は激しく変わる中、プロジェクトの存続自体を問われる局面が幾度もありました。苦難に直面した時こそ真価が問われます。オンラインでの開催に舵を切り、どんな障害も日露学生たちと共に乗り越える覚悟をしました。結果、J-Anime Meeting in Russiaは、外務省からの日露地域交遊年正式事業として認定され、さらに、経産省の「コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金(J-LOD)」にも採択される事業となり、そして即戦力となりうる高度な日露グローバル人材が育っていきました。学生はJ-Anime Meeting in Russiaに関わることで将来の仕事に繋がる体験をし、または自身の力を最大限に活かす企業や団体に出会う就業活動に役立つ経験、自己像の確立と確認を行うことができたと確信しております。本プロジェクトを通し、もっとできることがあることがわかりました。意義あるインターンシップをいかに持続していくか。スキームや協力体制の整備などについて、微力ながら私たちも積極的にかかわっていきたいです。企業が、大学機関や国とより密に連携し、人材育成の機会を創出する時代は来ていると思います。

事業責任者 沼野恭子教授のコメント

「J-Anime Meeting in Russia」は、新楽直樹代表、浅川奈美プロデューサーを初めとするJVTAの皆さんの真摯で情熱あふれるご指導と、日露の学生たちの活躍が融合して生まれた画期的なプロジェクトでした。どういうところが「画期的」だったかといいますと、以下の4点にまとめることができると思います。

① 80名近い日本とロシアの学生が協働した、長期間にわたる大規模インターンシップだったこと。
② 上映作品の研究と選択・著作権交渉・宣伝・クラウドファンディング・トークショー・インタビューと、何から何まで学生たちが主体的に取り組んだこと。
③ 一回限りの単なる上映会ではなく、アニメ全12作品を通じて日本の文化や歴史をいろいろな角度から紹介した一大文化プロジェクトだったこと。
④ コロナ・パンデミックという前代未聞の困難にも負けずオンラインイベントとして実現させたこと。

長いプロセスでしたから予期せぬ問題が大小さまざま生じたはずですが、JVTAと学生たちによるコーディネーションや創意工夫により、それらを乗り越え成功へとつなげることができました。その結果、ロシアにJ-Anime の魅力を伝えることができ、真の意味での日露文化交流が成り立ち、学生たちは字幕翻訳やマネージメントについての知識や体験その他多くのことを身につけることができました。
私自身は、学生たちの自由な発想を受け止め、大学とともに学生を「育てて」くださるJVTAの皆さんの柔軟でクリエイティヴな姿勢に、深い感銘を受けました。ビジネスの世界であっても、またどんなにIT技術が進んでも、文化は人と人の琴線の触れ合いから生まれるものです。JVTAと本学との今回の「産学協働」プロジェクトが利益を度外視し、琴線の触れ合いの上に成り立っていたことを誇らしく嬉しく思います。


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