2018年11月17日(土)
「ロシアビジネス最前線」と題する座談会が本学の留学生日本語教育センター・さくらホールで開かれました。本イベントは2年に1度開かれるロシア会(本学ロシア語科卒業生の同窓会組織)総会の一部として、同会と TUFS 世界展開力強化事業(ロシア)実施本部の共催により行われました。日露ビジネス経験者・現役の方々を含むOB・OG約40名、現役学生約10名(展開力対象学生含む)が参加しました。本学からは、渡辺雅司名誉教授、鈴木義一教授、本事業推進責任者の沼野恭子教授、同事業コーディネーターの新井滋特任教授、前田和泉准教授が出席しました。
本学が目下取り組んでいる「世界展開力強化事業(ロシア)」の日露ビジネス人材育成プログラム(2017-2022年)は、日露相互留学、国際ロシア学・国際日本学の履修、そしてインターンシップを組み合わせたものです。そのなかでも特にインターンシップ実施や実学教育強化には TUFS日露ビジネスネットワーク(BIZNET=主として本学出身の日露ビジネス経験者・現役で本事業にご協力いただいている方々のネットワーク)が不可欠です。今回 BIZNETのメンバーである4人の皆さんをパネリストにお迎えしてお話を伺いました。鈴木義一教授が進行役を務めた座談会で、日揮、物産住商カーボンエナジー、産経新聞、日立建機で活躍されている方々にご登壇いただき、日露ビジネスの最前線で経験された出来事、および今後の展望についてお話しいただきました。以下、ご登壇順に紹介します。
加藤資一さん(1979年卒)からは、ロシア語を専攻するに至った経緯からお話がありました。加藤さんが福島県の高校に通われていた1973年当時、日本放送協会ではロシア語のテレビ講座が放送開始され、モスクワ放送局出身のアナウンサーが話す美しいロシア語に魅了されて専攻を決意されたそうです。加藤さんは就職してから一貫して日露ビジネスの最前線で活躍されてきました。お話の中では、現在お勤めの日揮が投資するハバロフスクの温室栽培事業やウラジオストクのリハビリ事業、および北極圏のヤマル・ネネツ自治区にあるLNGプロジェクトについて御紹介いただきました。
桐淵圭司さん(1992年卒)からは大学を卒業後のキャリア形成について御自身の体験を踏まえたお話を頂きました。大学卒業後、桐淵さんは丸紅に就職し、1994年から2001年までモスクワに駐在されました。ロシアでは鉱山機械用車両の大型タイヤを販売すると同時に、市場調査を担当。ソ連崩壊後の混とんとした新生ロシアでの生活について貴重なお話をいただきました。現在、桐淵さんは物産住商カーボンエナジーでロシアからの一般炭輸入に携わっていらっしゃいます。
遠藤良介さん(1999年卒)は大学院博士前期課程を修了後、産経新聞に就職、2006年から11年にわたってモスクワで特派員生活を過ごされました。現在は産経新聞の論説委員を御担当されています。2018年には『プーチンとロシア革命:百年の蹉跌』(河出書房新社)を刊行されて話題となりました。遠藤さんからは政権の動向や、経済界全体の動き、および日露平和条約交渉について、記者生活を踏まえたお話をいただきました。
門馬千尋さん(2010年卒)は大学卒業後、日立建機の欧州ロシア戦略部に配属されました。入社後はオランダに建設機械を輸出する仕事を担当された後、2013年から断続的にロシアへ駐在されました。現地で経験した日常生活の劇的な変化や、政府主導で進むロシアビジネスの特殊性について貴重なお話を頂きました。
パネリストからの話を一通り聴いた後は、会場からの質問を受けつけました。現役学生と卒業生との間で、今後の日露ビジネス、プーチン政権を取り巻く国際情勢、日露平和条約交渉について活発な質疑応答・意見交換が行われました。
座談会終了後は、サンクト・ペテルブルクでインターンシップやボランティア活動に邁進した本学の派遣留学生・及川 結さんによる報告がありました。
イベント後の懇親会では、モスクワ国際関係大学からの交換留学生 Evgenia Nikitina さんも参加するロシア民謡サークル「ルムーク」が歌を披露し、場を盛り上げました。教員、OB・OG、現役学生らが交流を深めました。