彼女たちは、カバレットの芸人や歌手、舞台俳優、ラジオのナレーターやジャーナリストとして常に旅の途にあり、表現者としては、既存の芸術領域からはみ出すような横断的存在であった。そしてその越境的なあり方は、彼女たちのその後の運命にも暗い影を落としている。(中略)第二次世界大戦とホロコーストによって、国外に逃れた彼女たちの、一九二〇年代の活動や作品は中断され、文学史記述からもこぼれ落ちていったのだが、ラインスベルクはこの忘却のプロセスを軸に彼女たちの生涯を描いている。(本書「訳者解説」より)
本書「訳者解説」より
著者紹介
アンナ・ラインスベルク(Anna Rheinsberg)
1956年、ベルリン生まれ。マールブルク大学でドイツ文学を専攻し、1983年にクレア・ゴルに関する論文で修士号を取得している。1980年代前半から作家活動を本格的に開始し、詩集や小説を複数の出版社から発表するほか、ラジオ番組の制作や演劇、映画にも関わっている。1920年代の女性作家たちの作品を発掘、紹介する活動でも知られる。主な作品に『マルテとルート』(1987)、『シュヴァルツキッテル通り』(1995)、『バスコ ある愛の物語』(2004)、『緑のワンピース』(2011)などがある。
訳者紹介
西岡 あかね(にしおか あかね)
東京外国語大学大学院准教授。専門は近現代ドイツ文学、比較文学。著書に著書にDie Suche nach dem wirklichen Menschen (Königshausen & Neumann, 2006)、共著にÄsthetik – Religion – Säkularierung II (Wilhelm Fink, 2009)、Flucht und Rettung (Metropol, 2011)、Kulturkontakte (Transkript, 2015)、『男性性を可視化する』(青弓社、2020年)などがある。
メディア・書評・紹介記事
・『読売新聞』2023年11月16日:女性が書く女性芸術家 仏独 作家の視点〔東京外国語大学読売講座〕
・『読売新聞』2023年11月19日:作家が捉えた「女性芸術家」 荒原教授・西岡准教授 仏独文学語る〔東京外国語大学読売講座〕
・『読売新聞』2023年11月22日:女性作家が書く女性芸術家の肖像――フランスとドイツ 裸体自画像に見た輝き 「女性が主体」追求と挫折〔東京外国語大学読売講座 詳報〕
・『図書新聞』2023年12月23日:〔23年下半期読書アンケート〕 塚原史
・『図書新聞』2024年2月24日:いかに多様な性/生は語り得るのか――歴史的アヴァンギャルドに属するドイツ語圏の3人の女性作家たちがいかに歴史から「溢れていたか」その過剰さへの暴露と共鳴が浮き彫りになる 小松原由理
【イベント】
・東京外国語大学アゴラ・グローバル 2023年11月25日
連続市民講座「世界を学ぶ、世界を生きる」第7回「女性作家が書く女性芸術家の肖像——フランスとドイツ」
荒原邦博、西岡あかね
東京外国語大学、読売新聞立川支局主催
・紀伊國屋書店新宿本店3階アカデミック・ラウンジ 2023年12月13日
女性が芸術家になること—―フランスとドイツの女性作家が私たちに伝える希望と苦悩(トランスギャルド叢書『ここにあることの輝き』『それぞれの戦い』刊行記念)
荒原邦博、西岡あかね
・東京外国語大学総合文化研究所 2024年6月28日
アンナ・ラインスベルク『それぞれの戦い――エミー・バル=ヘニングス、クレア・ゴル、エルゼ・リューテル』を読む
田丸理砂、小田原琳、西岡あかね 司会:前田和泉
東京外国語大学総合文化研究所主催、東京外国語大学出版会共催
トランスギャルド叢書『それぞれの戦い エミー・バル=ヘニングス、クレア・ゴル、エルゼ・リューテル』
アンナ・ラインスベルク(著) 西岡あかね(訳)
【ジャンル】
文学・文芸
【シリーズ】
トランスギャルド叢書
【版・頁】
四六変型判・上製・160頁
【ISBN】
ISBN 978-4-910635-07-1 C0097
【出版年月】
2023年11月20日発売
【付 属】
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2200円(税抜)