ココナッツ専門店のココウェルさんが、ココノキ(Coco no Ki) の商品を本格的に販売されるようで、とても嬉しいです。
このプロジェクトは、2013年11月にフィリピン中部を襲った台風ヨランダの強風で倒れてしまったココナッツの木を活用したものです。
この台風で、ココナッツで生計を立てていた農家さんたちは現金収入源を失ってしまいました。現地の村々を回って調査をしたのですが、被災から1年半以上 たっても、10代の子供たちが学校をやめて出稼ぎに行ったり、村に残った大人たちも借金漬けになってしまったり、食事の質や量が悪くなっていたり、困窮化は痛々しいです。ココノキ・プロジェクトは、そういう現地の人びとに新しい雇用の機会も生み出しています。
今年の春に、ココウェルの水井さんのご好意で、ココノキ・プロジェクトの作業場を見学させてもらいました。場所は台風被害の大きかったレイテ島です。そこ で私は、職人さんたちが創意工夫しながら、誇りをもって作業に取り組んでいる姿に感銘を受けました。「なるほど、これは地場産業を創る試みなんだな」と、 腑に落ちたのです。
フィリピンの農村で貧しい家庭に生まれてしまうと、いくら頭が良かったり、勤勉だったりしても、大学に進学したり、良い収入を得るのは、なかなか厳しい現 実があります。個人の才覚や努力が報われにくくて、人生の選択肢の幅が狭く、抱ける夢の量が少ない社会だからです。そのため、多くのフィリピン人が故郷を 後にして、愛する家族を支えるためや夢をかなえるために世界中に出稼ぎにいくわけです。
でも、故郷に地場産業ができれば、村人も出稼ぎで家族と離れ離れになることなく一緒に暮らすことができます。現地リーダーのデイルさんも、地域で雇用を創出することの重要性を深く考えていて、たとえば無職の若者たちをこのプロジェクトに巻き込んでいました。
しかも、地場産業ができるということは、人びとの頑張りや創意工夫が報われる仕組みを、社会に新しく作り出すことに他なりません。「頑張っても報われない 社会から、頑張れば報われる社会へ」、という転換が少しずつでも起きるのならば、これは本当にすごいことだと思います。
品質の高い商品を創るために、水井さんは言葉はとても優しいのですが、とても細かな点まで職人さんに要求していました。そんなに厳しく要求すると、彼らがやる気をなくしてしまうんのでは、と不安になったりもします。しかし、デイルさんをはじめ職人さんたちは、「日本の消費者が満足してくれる商品を 作るぞ」と、ココウェルさんの要求に応えようと、一生懸命に知恵を出し合って試行錯誤していました。
私の手元にも、ココノキの商品が何点かあるのですが、どれもとても丁寧に作られていて、日々愛用しています。ココナッツは目が粗くて、決して加工しやすい木材ではないと思うのですが、よくぞここまでと感心します。
私自身、ワークキャンプや研究を通じてレイテ島の人びとと15年以上つきあってきたのですが、こうやって災害を契機に日本の消費者とフィリピンの村人たちを繋げられるなんて、思いもよりませんでした。ココノキの商品を手にとると、レイテの友人たちのことを思い出して彼らに会いたくなります。
ココウェルさんの商品へのこだわり、生産者への優しさ、ビジネスと社会貢献への信念、本当に素敵だなと思います。