日露ビジネスサマースクール 2019

2019年7月22日(月)から8月2日(金)まで、2週間の日程で2019年度日露ビジネスサマースクールが開催されました。ロシアの6協定校から30名の学生が来日し、本学の学生と交流しながら集中的に日本語と国際日本学を学びました。終了直後に行ったアンケート調査によると、昨年度に引き続き全員が「他の人にも勧めたい」と回答し、うち約95%が「ぜひ勧めたい」を選択しました。今年度もまた満足度の高さがうかがえる結果となりました。以下にサマースクールの概略を報告いたします。(※上の画像は開講式の集合写真)

歓迎の挨拶をする林学長

開講式
7月22日、10時30分より、開講式が行われました。林佳世子学長と沼野恭子教授による歓迎の挨拶があったあと、新井滋特任教授によるプログラムの紹介がありました。

続いてタンデム学習会(後述)が開始、夕刻には学内の食堂で歓迎パーティーが行われました。本学の和楽器サークル「伯牙会(はくがかい)」による演奏会が開かれ、ロシア人学生は音楽と食事を楽しみながら、日本人学生との親睦を深めました。

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和楽器サークルによる歓迎の演奏         食事と会話を楽しむ学生たち

日露タンデム学習
ロシア人学生らは来日の翌日から、早速日露タンデム学習を開始しました。学生らはいずれもロシア語を専攻する本学の日本人学生とペアを組み、7月22日、23日、25日の三日間にわたってタンデム学習に参加しました。

タンデム学習は参加者の自主性と互恵性をベースに置きつつ、いずれも各自の学習(及び目標の達成)に責任を持ち、パートナーはその手助けを行うものです。従って、日露それぞれの学習者は目標言語を使用し、それについてネイティブであるパートナーからフィードバックを受けることができます。

今回は学習会に入る前に、タンデム学習を研究対象としているベンジャミン・フィーリップ・ラーソン氏(本学博士後期課程在籍)から、英語でオリエンテーションを実施していただきました。そのため、学生らはタンデム学習の意義や目的、注意点などについて事前に理解を深めることができました。また、昨年度の実施時に得られたフィードバックを活かすことで、学生たちはよりスムーズにタンデム学習を行うことができました。

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ラーソン氏によるガイダンス                タンデム学習会の様子    

1回のセッションの大まかな流れは以下の通りです。

  • 日本人学生がロシア語でパートナーにインタビュー
  • ロシア人学生が日本語でパートナーにインタビュー
  • 目標言語でインタビュー内容を作文する
  • 作文を交換し添削を受ける
  • 発音指導をする
  • 添削済みの作文を清書する
  • グループで内容を共有する
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講義の様子

テーマは「自己紹介」「日本語・ロシア語学習の動機、目標言語の難しさ」「一日文化研修について」など、事前に設定したもののほか、パートナーと話し合い自由にテーマを設定するセッションもありました。加えて、セッションごとにパートナーを入れ替えることで、様々な学習者と交流しつつ学習できるよう配慮しました。また、タンデム学習の枠組みの一環として、7月26日(金)には日本映像翻訳アカデミー(JVTA)様より講義およびワークショップが実施されました。講義によると、映像翻訳では、音声をただ訳して字幕にするのではなく、限られた字数内で意図を伝えることが重要です。さらには、登場人物の話し方や表情に配慮するなど、細かな技術が必要とされます。学生の多くは普段から翻訳活動や通訳業務などを意識して学習していますが、JVTA様による講義を通し、字幕翻訳の奥深さに感じ入った様子でした。

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ワークショップの様子
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グループの翻訳を全体に共有

和訳・露訳ワークショップでは、日露の学生がグループになり、班ごとに提示された映像の字幕を提案しました。映像はほんの数十秒でしたが、それをいかに訳すかの議論は白熱し、時間ぎりぎりまで検討を重ねる学生の姿が印象的でした。最終的に一つの映像字幕が出来上がると、教室内に拍手が巻き起こりました。

一日文化研修
7月24日(水)、「タンデム学習」の一環として、ロシア人留学生は江戸東京博物館と上野公園を散策しました。この研修では参加者が4人前後の日露のグループを作り、賑やかに交流しながら周遊していました。

午前中は江戸東京博物館を訪れました。

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 博物館前で(背景の建物は両国国技館)

館内では、日本人学生がグループの相手にロシア語で説明したり、日露の学生が日本語で談笑したりする姿があちらこちらで見られました。何人かのロシア人学生は、博物館の近所にある、「すみだ北斎美術館」を訪れました。

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午後は上野公園を散策しました。ロシア人学生は日本人学生のリードで、アメ横や上野東照宮など様々な名所を訪れ、有意義な一日を過ごしました。この日の活動内容は翌日のタンデム学習のテーマにも設定されており、各参加者は活動を振り返りながら文化研修の印象を発表にまとめました。

国際日本学

新井先生によるガイダンスからスタート

7月29日(月)から8月2日(金)にかけて、ロシア語で教授する集中講義「国際日本学」が行われました。日本をテーマに、ビジネス・経済、就職、日露交流史、文化など幅広い領域にわたる講義が実施されました。RJIの(実学強化関連)履修推奨授業科目であり、語学的には上級レベルとなりますが、本学のロシア語専攻学生も履修しました(10名超)。

7月29日は、新井滋先生(本学特任教授)による、ガイダンスおよび大学紹介・世界展開力強化事業と8項目の日露経済協力プランについての紹介がありました。

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続いて渡辺雅司先生(本学名誉教授)が「東京外大とメーチニコフ」というテーマで講演を行いました。最後にNHK国際放送局のアナスタシア・モナコワ放送専門家より、「NHKについて―ロシア人ジャーナリストの仕事―」というテーマの講義が行われました。講義終了後は新井先生や渡辺先生、および4名の参加学生にインタビューが実施されました。そのほか、参加学生らはモナコワ放送専門家と共に多磨霊園を散策し、ゾルゲや東郷平八郎など日露交流史に名を遺した著名人の墓地をめぐりました。この日の様子はラジオ番組”NHK WORLD-JAPAN”にも取り上げられ、前編後編の2回にわたって放送されました。

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 モナコワさんと一緒に記念写真

7月30日は、中村拓海氏(株式会社ソーシャライズ代表取締役)による「日本の就職事情」をテーマとした講義および就活ワークショップが2コマ連続で行われました。ロシア人学生にとって、日本での就職に対する理解を深め、自分自身でビジョンを考え直す貴重な機会となりました。また、就活を控えた日本人学生にとっても、非常に参考になる話が多く、学生らはいずれも講師の話に熱心に耳を傾けていました。最後に翌日に控えた企業訪問を前に、新井先生より企業研究のレクチャーがありました。

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日本における就職活動の特徴とは?       就活ワークショップのグループ活動

8月1日(木)はピョートル・ポダルコ先生(青山学院大学教授)による「日露交流史」講義が2コマにわたって行われました。学生らは、日露交流の長い歴史に3時間という短い時間で触れることができました。その後、ロシア国営メディア「スプートニク日本」のエレオノーラ・シュミロワ東京特派員にご登壇いただき、ロシアにおける日本語放送の仕事についてお話をいただきました。

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 講義をするポダルコ教授          「スプートニク日本」の紹介

8月2日(金)はムロド・イスマイロフ先生(本学非常勤講師)によって、「国際政治:日本は世界をどう見ているか?」というテーマで講義とワークショップが実施されました。日本外交政策の説明を基に、日露の学生がグループとなり、成果物を発表する学生参加型の授業となりました。

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日露学生の共同作業          取り組む表情は真剣そのもの
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グループの成果物を全体に発表

一日企業訪問
7月31日(水)は一日企業訪問として、午前中はソニー本社を、午後はNHK放送センターを訪れました。

閉講式
8月2日(金)、2週間のプログラムを終え、ロシア人学生らは達成感のある表情で修了証明書を受け取りました。

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修了証を受け取り晴れやかな表情を見せる日露の参加学生たち