2019年3月12 日(火)
モスクワ留学中の留学生に対するインターンシップがモスクワ日本センター 様のご協力で実施され、本学から短期派遣学生5名(他大学から8名)、長期派遣学生5名が参加しました。
前半は日本センターの浜野所長によるレクチャーを拝聴しました。日本センターについて、日露経済について、ロシアとロシア人について、商社時代からの長いロシア・CIS地域への関わりに根ざしたお話は大変興味深く、浜野さんのおっしゃる「襞(ひだ)のあるロシア」を感じることができました。
日本センターは、日露両国政府の合意に基づき、ロシアの市場経済改革支援の一環として、将来のロシア経済を担い日露経済関係の分野で活躍が期待できる人材を発掘・育成することを目的の一つとしてとして設立された独立非営利法人で、最近は日露の貿易経済関係の拡大につながるビジネスマッチングなどの事業に力をいれています。
浜野さんによると、日露経済関係は一貫して低調。理由は、ロシア経済がモスクワのあるヨーロッパ・ロシア部を中心としており、日本に近い極東は人口・経済規模が小さいという地理的要因と、ロシアがソ連時代の自己完結型経済の構造を残しているため、現代のグローバル経済のサプライチェーンに組み込まれていないという歴史的要因があるという分析は大変分りやすかったです。
学生のロシアへの取り組み方については、「まず言葉ありき」ということで、日本人は言葉にして表現するのを苦手とするが、ロシアではそれではやっていけないことを戒められました。また、自分はなぜロシア語を選んだのかをもう一度考え、よそ見をするのではなく、それと真正面から取り組むことの大切さについても逸話を交えたお話がありました。
後半は翌日にロシア語検定試験 (ТРКИ)を控えた一部の学生のために、本学の特定外国語教員(ロシア語)で、浜野所長の奥様・アーラさんがロシア語のレッスンをしてくださいました。概して日本人学生はスピーキング(говорение)が苦手なので、恥ずかしがらずに大胆に話せるように、試験と同じ形式の練習問題で表現力豊かに対話する練習をしました。大胆に話すことについては、ロシア人全般に学ぶことが多いようです。
参加した学生のレポートの一部をご紹介します。
・ロシア経済について、そして日露の経済関係について、その道のスペシャリストの方にお話を聞くことができ有意義な時間となった。浜野さんがロシア経済の現状を「大型ベンツが時速10キロで走っている」と表現したのが印象的だった。これは成功・発展する条件が揃っているのになかなか上手く行っていないという意味だ。これだけの国土と国際的な影響力を持っていて経済規模世界10位というのは確かにもったいない感じがする。しかしながら、経済の発展を阻害していると思われるロシア経済の自己完結的な性格はそう簡単に変えられるものではない。ソ連時代からの、自給自足、もしくは自分のことは自分でやるという精神がロシアには根づいているからだ。いずれにせよ、モスクワがどんどん発展しているのは確かなので、ロシアがこれからどのように変わって行くのか日露ビジネスに携わりながら見ていけたらいいと思う。
・現在日本と他国の貿易や投資促進に関わっていきたいと思っており、日本貿易振興機構や外務省、経済産業省などへの就職を考えているが、日露の経済関係に未来があるのか不安になることも多い。日中、日越関係にも興味がありどの地域を今後専門にしていくかはまだ決め切れておらず、恐らく二国間関係の見通し次第で決めることになると思う。今回のお話ではエネルギー分野や、極東部に加えてヨーロッパロシアへの日本企業の進出など、相互の利益が創出できるような部分も知ることができた。日露経済に直接携わっている方の話を直接聞けたのは将来の選択にも参考になった。またエネルギー関係の企業にも興味が湧いてきた。
・日本との関係が今後発展すると思われる地域やますます重要となっていく分野について学び、批判的にも評価して自分が納得できる職選びをできるようにしたい。
* 実施概要
日時: 2019年3月12日(火)15:00-16:30
場所: 独立非営利法人「貿易経済交流発展のための日本センター」(モスクワ)
ご対応(敬称略)
浜野道博 日本センター・モスクワ所長
浜野アーラ 東京外国語大学・特定外国語教員(ロシア語)
本学からの参加学生:10名
(短期派遣 – 5名)
長谷川晃一、石川大智、小泉夕輝、芝元さや香、本間輝
(長期派遣 – 5名)
安東諒祐、野口貴宏、大塚菜央、根本茜、阿部大志
スケジュール
15:00-16:00 浜野所長によるレクチャー
16:00-16:30 アーラさんによるロシア語レッスン