2019年3月下旬、日本映像翻訳アカデミー㈱(JVTA)でインターンシップを実施して頂きました。本学2年生(インターンシップ時)の光永万結子さんとモスクワ国際関係大学(修士課程)からの受入留学生 エブゲニヤ・ニキーチナさんの2名が参加しました。
JVTAは1996年に設立された映像翻訳者養成を専門とする学校です。映像翻訳者や映像制作ディレクターを養成するかたわら、修了生のための翻訳エージェントとして映像字幕の作成をはじめとする翻訳・通訳サービスも提供しています。JVTA に登録する翻訳者・通訳者は700名にのぼり、取引先は多岐にわたります。また、アメリカにはロサンゼルス校があるほか、モスクワにはオフィスを構えており、活動拠点を国外でも拡大しています。
学生らは講師・映像翻訳ディレクターの桜井徹二様より企業説明を受けたあと、各自の業務に配属されました。光永さんは主に吹き替え台本(日⇔英)の添削に携わったほか、JVTA 受講生らと一緒に日本語吹き替えを体験しました。エブゲニヤさんは日本語からロシア語(日 ⇒ 露)の翻訳等に取り組みました。また、学生らは溜池山王のスタジオで字幕収録の様子を見学する機会にも恵まれました。そしてインターンシップの最終日、学生らはそれぞれ日露事業の提案をプレゼンテーションし、受け入れ担当者らとの意見交換を行いました。
参加学生の報告 1 – 光永万結子
(翻訳作業)
翻訳作業は全く初心者だったこともあり、日 ⇒ 英翻訳が特に大変だった。文法、読解など英語力に自信があっても、音声を文字にするという二項目にまたがる変換作業は、活字や音声の翻訳とは異なり、いかに視聴者に伝わりやすい表現にできるかといった意味で別の難しさがあると感じた。加えて、文章をそのまま訳すのではなく、文化的コンテクストや文脈、前後のシーンとのつながりなどあらゆる方向から判断して訳す作業は、学部の講義で教わったことが大きく生かされ、自分が大学で学んでいることを社会においてどのように活用できるのか考える良い機会になった。特に、コンテクストの高低を考慮して主語の扱いを変えたり、各国の生活へのなじみの有無に伴って省略したり意味をつけ足したりする作業において、学部で得た知識を活用することができた。
(日露事業の提案)
日露事業は始まったばかりで、今回の業務でロシア語を使う機会はなかった。しかし、だからこそ自由な発想で提案ができたのはとても良い経験だった。若者の活字離れが進む現代において、新たに文化の懸け橋となるのが映像や音楽などにかかわるものだという考えをインターンシップの前から抱いていたため、それについての提案をすることができ、社会経験としてだけではなく、自分の今後の考えをまとめるうえでもよい機会となった。
(インターンシップ全体)
部活の合宿や集中練習と時期が重なってしまったため、インターンシップに参加できる時間が極端に少なくなってしまったのが非常に残念である。初めて行う作業でも、回数を重ねることによって慣れ、質の高いものに仕上げることができると感じたので、参加する際はできるだけ連続して、長期出勤することが望ましいと感じた。
企業側の対応がとても親切だった。アットホームで小規模な会社ということもあり、担当の方を始め、社内の方に直接お話を伺えることができ、翻訳業界への興味の有無にかかわらず、自らの視野を広めるという点で将来のためになると感じた。
参加学生の報告 2 – エブゲニヤ・ニキーチナ
(動機)
翻訳に強い関心を持っているので、私にとって字幕の世界を楽しめる日本映像翻訳アカデミーでのインターンシップはとても魅力的でした。これまでにアルバイトで日露・露日翻訳に取り組んだことはありますが、字幕作成に挑戦するのは今回が初めてです。できるだけ多くの専門的なスキルを身につけ、自分の能力を向上させたいと思いました。また、インターンシップの作業を通じ、日本の会社についての理解を深めることにつながるのではないかと期待しました。
(取組内容)
・字幕翻訳についての学習
・日英映像翻訳体験
・子供向けのアニメに出てくるセリフの書き起こしとロシア語への翻訳
・既に作成された字幕のチェック
・リサーチ:
– ロシアのテレビに関するリサーチ(ロシアの地上波放送と衛星放送、TV局の数、番組の内容)
- ロシアで見られる日本のアニメに関するリサーチ(アニメの配信、字幕のレベルなど)
・ビジネス企画のプレゼンテーション
(学んだこと・感想)
日本映像翻訳アカデミーは、映像翻訳のプロを育成するばかりでなく、いくつかの部門からなる組織です。例えば、同校の就業支援部門であるメディア・トランスレーション・センター(MTC))はJVTA 修了生にドラマ、アニメなどの翻訳業務を委託しています。インターンシップに取り組んでいたとき、色々な部門からタスクを受けたり、様々な分野で働いている社員と話したりしました。知らないことがたくさんあっても、皆さんの応援を感じて、一生懸命に頑張りました。インターンシップはとても短かったにもかかわらず、字幕作りに役に立つコツと字幕制作ソフトを少し体験することができました。これからも自分で字幕作成に関する知識を広げていきたいと思います。字幕そのものだけではなく、字幕を作っている会社が直面している課題や映像翻訳事務のフローを学ぶことができて有益でした。このような機会をいただけたことに心より感謝しております。
* 実施概要
実施日:2019年3月18~同29日までの期間中に5日間実施
場所:日本映像翻訳アカデミー(103-0021中央区日本橋元本石町3-2-4共同ビル2F/3F)
ご対応(敬称略)
新楽直樹 代表
桜井徹二 学校教育部門プログラム開発担当 / 映像翻訳ディレクター / 講師
丸山雄一郎 ロシア事業担当ディレクター
板垣七重 映像翻訳ディレクター
ほかの皆さま
参加学生:2名
光永万結子(本学)、エブゲニヤ・ニキーチナ(モスクワ国際関係大学)